2022リバプール世界選手権の個人総合決勝で橋本大輝選手と張博恒(ヂャン・ボーホン/チョウ・ハクコウ)選手(中国)のどちらが勝つと思うかと問われたら「ミスの少ない方が勝つ」としか言えないくらいに実力伯仲しています。
橋本大輝選手はフル構成の36.7を実施する可能性が高く、張博恒選手はフル構成の36.6を通すことが出来るのか判断が難しいとことです。

張博恒選手のDスコアに関してツイッターでアンケートを取ってみましたが均衡しています。


それでは橋本大輝選手と張博恒選手の演技を1種目ずつ見ていきます。
張博恒選手に関してはフル構成を載せて低い構成についてはコメントで触れていきます。
■ゆか
・橋本大輝選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1
ロンダート~後転とび~
リ・ジョンソン:後方かかえ込み2回宙返り3回ひねり

G

2
ロンダート~後転とび~
後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり:新月面宙返り

E

3前方伸身宙返り1回ひねりC
4~前方伸身宙返り2回半ひねり
E
5
ロンダート~
後方伸身宙返り2回ひねり

C

6フェドルチェンコ:下向き(ロシアン)1080°転向C
7開脚座から伸腕屈身力十字倒立C
8
ロンダート~
後方伸身宙返り2回半ひねり

D

9+前方伸身宙返りB0.1
10
ロンダート~
後方伸身宙返り3回ひねり

D

Dスコア:6.0(G1 E2 D2 C4 B1 CV:0.1)
Eスコア:8.566
得点:14.566
橋本大輝選手はおそらくゆかはフル構成の6.0です。
「リ・ジョンソン」の安定感と着地の精度の高さは素晴らしいとしか言えません。

・張博恒選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1前方伸身宙返り1回ひねりC
2+前方屈身2回宙返り
E0.1
3
ロンダート~
後方伸身宙返り2回半ひねり

D

4+前方かかえ込み2回宙返りD0.2
5前方伸身宙返り2回半ひねりE
6
ロンダート~
後方伸身宙返り2回ひねり

C

7

前方伸身宙返り2回ひねり
~前方伸身宙返り1/2ひねり
D


8フェドルチェンコ:下向き(ロシアン)1080°転向C
9開脚座から伸腕屈身力十字倒立C
10
ロンダート~
後方伸身宙返り3回ひねり

D

Dスコア:6.1(E2 D4 C4 CV:0.3)
Eスコア:8.533
得点:14.633
張博恒選手のゆかのフル構成は6.1。
「後方伸身宙返り2回半ひねり」からの組み合わせを「前方伸身宙返り」にした5.8の構成でくる可能性もかなりあると思います。

ゆかはそこまで差が広がらないと予想されます。

■あん馬
・橋本大輝選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度
1ケイハ4
両ポメルを越えて縦向き後ろ移動(5馬端~1馬端)をしながら1/2ひねり(1/2シュピンデル)
E
2アイヒホルン
横向き開脚旋回1回ひねり移動(2回以内の旋回で逆馬端へ移動し再び戻る)
E
3横向き開脚旋回1回ひねり(2回以内の旋回で):横向き開脚旋回シュピンデルD
4正交差(セア)倒立:正交差1/4ひねり1ポメル上倒立経過、反対の腕で下ろして正交差入れ支持D
5E難度のフロップ:1ポメル上で4フロップ
横から横でシュテクリB→横縦ループ→縦横ループ→横から横でシュテクリB
E
6D難度のコンバイン:1ポメル上で2フロップから下向き(ロシアン)180°転向
横縦ループ→縦横ループ→下向き(ロシアン)180°転向
D
7ロス:下向き(ロシアン)360°転向3/3部分移動D
8開脚マジャール移動:縦向き開脚旋回前移動3/3部分(1馬端~3あん部馬背~5馬端)D
9開脚シバド移動:縦向き開脚旋回後ろ移動3/3部分(1馬端~3あん部馬背~5馬端)D
101ポメル上縦向き旋回(縦横ループ)倒立3/4(270°)ひねり3/3部分移動下り
D
Dスコア:6.3(E3 D7)
Eスコア:8.366
得点:14.666
今年から取り入れた「ウ・グォニアン」ですがなかなか上手くいかなかったためか「ケイハ4」に変えてきました。
「ケイハ4」は「ウルジカ2」とともにグループⅢでE難度を取れるため流行しています。
得意の開脚技ということで安定していい実施が可能となるように思います。
世界選手権では下り技をE難度にした6.4の構成でいくと思います。

・張博恒選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度
1正交差1/4ひねり1ポメル上倒立経過、反対の腕で下ろして逆交差入れ支持:正交差(セア)倒立D
2逆交差1/4ひねり1ポメル上倒立経過、反対の腕で下ろして逆交差入れ支持:逆交差(セア)倒立C
3ショーン(メリーゴーランド)
両ポメル上で横向き正面支持から、1ポメル上で片腕支持上向き全(360°)転向して
両ポメル上での背面横向き支持を経て、両ポメル上での横向き正面支持
E
4D難度のコンバイン:1ポメル上で2フロップから下向き(ロシアン)180°転向
縦縦ループ→縦横ループ→下向き(ロシアン)180°転向
D
5ロス:下向き(ロシアン)360°転向3/3部分移動
D
6トン・フェイ:縦向き~縦向き支持
下向き正転向移動(馬端から両ポメルを越えて下向き(ロシアン)180°転向 )
D
7マジャール移動:縦向き旋回前移動3/3部分
1馬端~2ポメル~3あん部馬背~4ポメル~5馬端
D
8シバド移動:縦向き旋回後ろ移動3/3部分
1馬端~2ポメル~3あん部馬背~4ポメル~5馬端
D
9馬端馬背下向き(ロシアン)1080°転向D
101ポメル上縦向き旋回(縦横ループ)倒立3/4(270°)ひねり3/3部分移動下り
D
Dスコア:6.0(E1 D8 C1)
Eスコア:8.033
得点:14.033
課題のあん馬は流行り技の「ショーン」を取り入れることで大台の6.0に乗せてきました。
「ショーン」のところを「フクガ」にした5.7の構成でくる可能性もかなりあると思います。

あん馬が得意な橋本大輝選手としては15点に迫る得点を出してリードしたいところです。

■つり輪
・橋本大輝選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度
1後ろ振り上がり中水平支持E
2後ろ振り上がり十字倒立E
3ジョナサン(屈身ヤマワキ):前方屈身2回宙返り懸垂D
4ヤマワキ:前方かかえ込み2回宙返り懸垂C
5ホンマ十字懸垂:肩が輪の高さで前方屈身宙返り直接十字懸垂D
6後方伸腕伸身逆上がり(後転)十字懸垂:アザリアンD
7ほん転逆上がり倒立C
8後ろ振り上がり倒立C
9後方車輪(ほん転逆上がり)倒立経過B
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:(伸身新月面宙返り下り)
F
Dスコア:5.9(F1 E2 D3 C3 B1)
Eスコア:8.533
得点:14.433
「ほん転逆上がり十字倒立」から「後ろ振り上がり十字倒立」に変更しました。
「ホンマ十字懸垂」と「アザリアン」の持ち込み時の肩の高さにも改善が見られかなり良くなっていると思います。
下り技で伸身新月面宙返り下りを実施してDスコアを0.1上げました。
つり輪は凄く強化されている印象を受けました。

・張博恒選手
 
技順グループ
技と技の内容(通称など)難度
1ヤン・ミンヨン
後方伸腕伸身逆上がり上水平支持:後転上水平支持
E
2後方伸腕伸身逆上がり中水平支持:後転中水平支持E
3後ろ振り上がり十字倒立
E
4ジョナサン(屈身ヤマワキ):前方屈身2回宙返り懸垂
D
5後ろ振り上がり中水平支持
E
6アザリアン(後転十字懸垂):後方伸腕伸身逆上がり十字懸垂D
7後ろ振り上がり上水平支持D
8後ろ振り上がり倒立C
9ほん転逆上がり倒立C
10後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり下り:(新月面宙返り下り)
E
Dスコア:6.3(E5 D3 C2)
Eスコア:8.250
得点:14.550
つり輪は「後ろ振り上がり十字倒立」を入れてオールラウンダーとしてはかなり高い6.3の構成です。

つり輪が得意な張博恒選手はここであん馬で開いた差を詰めたいところですが、中国選手権を見る限りまだ細かいところで完成度が高まっていない印象を受けました。
世界選手権までに完成度を上げたいところです。

■跳馬
・橋本大輝選手

ロペス:伸身カサマツ跳び(側転跳び1/4ひねり前方伸身宙返り1/2ひねり)2回ひねり
Dスコア:5.6
Eスコア:9.333
得点:14.933
高さがありひねり切りにも余裕がある実施です。

・張博恒選手

ロペス:伸身カサマツ跳び(側転跳び1/4ひねり前方伸身宙返り1/2ひねり)2回ひねり
Dスコア:5.6
Eスコア:9.400
得点:15.000

跳馬は両選手ともに完成度の高いロペスを跳べるので差は付きにくいです。

■平行棒
・橋本大輝選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度
1後ろ振り(腕支持)上がり前方屈身宙返り支持(ホンマ、ソニック)D
2ヒーリー:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持D
3棒下宙返り1/2ひねり倒立E
4棒下宙返り倒立D
5後方車輪倒立:ケンモツC
6前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(爆弾カット)
D
7バブサー
倒立から振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き、
伸身かつ水平位で懸垂
E
8ティッペルト
倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立
D
9前振り1/2ひねり倒立:ツイストC
10前方かかえ込み2回宙返り1/2ひねり下りE
Dスコア:6.1(E3 D5 C2)
Eスコア:8.633
得点:14.733
平行棒はいつもの構成です。
インカレ終了後の会見では「マクーツはどうかな」と話していたので実施する可能性は低いと見ています。

・張博恒選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度
1シャルロ:棒下宙返り単棒縦向き倒立(静止1秒)E
2ベジェナル(単棒ヒーリー):単棒倒立から後ろ振り片腕支持1回ひねり支持
E
3リチャード:(アームディアミドフ)
前振り(腕支持)上がり片腕支持1回ひねり倒立
E
4後方車輪倒立:ケンモツC
5棒下宙返り倒立D
6前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持:(爆弾カット)D
7
バブサー
倒立から振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き、伸身かつ水平位で懸垂
E
8ティッペルト:倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立D
9ヒーリー:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持D
10前方かかえ込み宙返り1/2ひねり後方かかえ込み宙返り下りE
Dスコア:6.4(E5 D4 C1)
Eスコア:8.900
得点:15.300
今年は6.4まで上げてきた平行棒は張博恒選手にとっては得点源となりました。

平行棒はDスコア・実施ともに張博恒選手が上を行きます。

■鉄棒
・橋本大輝選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立D
2+リューキン:懸垂前振り伸身背面とび越し1回ひねり懸垂F0.2
3カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
4コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
5伸身トカチェフ:懸垂前振り伸身背面とび越し懸垂D
6+トカチェフ:懸垂前振り開脚背面とび越し懸垂C0.1
7アドラー1回ひねり両逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり両逆手倒立
E
8シュタルダー:後方開脚浮腰回転倒立B
9クースト:後方とび車輪1回ひねり(ホップターン)
C
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.7(G1 F1 E3 D2 C2 B1 CV:0.3)
Eスコア:8.733
得点:15.433
橋本大輝選手の鉄棒は現在のフル構成の6.7です。
橋本大輝選手は疲れてくると下り技がすっぽ抜けて動いてしまうとのことなので、勝負を分けるのは着地になってきそうです。

・張博恒選手

技順グループ
技と技の内容(通称など)難度組み合わせ加点
1アドラー1回ひねり両逆手倒立
前方浮腰回転振り出し1回ひねり両逆手倒立
E
2アドラー1/2ひねり倒立:前方浮腰回転振り出し1/2ひねり倒立
D
3伸身トカチェフ:懸垂前振り伸身背面とび越し懸垂D
4カッシーナ:伸身コールマン
バーを越えながら、後方伸身2回宙返り1回ひねり懸垂
G
5コールマン
バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り1回ひねり懸垂
E
6倒立から後方浮腰回転後ろ振り出し順手背面懸垂C
7順手背面車輪:(チェコ式車輪)D
8ケステ:順手背面懸垂前振り上がり後方浮腰回転倒立C
9シュタルダー:後方開脚浮腰回転倒立B
10後方伸身2回宙返り2回ひねり下り:ワタナベ(伸身新月面宙返り下り)E
Dスコア:6.2(G1 E3 D3 C2 B1)
Eスコア:8.733
得点:14.933
張博恒選手の鉄棒は「コバチ」を「伸身トカチェフ」に変えてきました。

鉄棒は橋本大輝選手の方が強いですが着地を止められるかどうかが大きなポイントになりそうです。

橋本大輝選手の合計Dスコア:36.7(ゆか6.0、あん馬6.4、つり輪5.9、跳馬5.6、平行棒6.1、鉄棒6.7)
張博恒選手の合計Dスコア:36.6(ゆか6.1、あん馬6.0、つり輪6.3、跳馬5.6、平行棒6.4、鉄棒6.2)

張博恒選手がゆかとあん馬でフル構成を実施出来れば両者に差はありません。
橋本大輝選手はあん馬と鉄棒、張博恒選手はつり輪と平行棒でどれだけ得点を伸ばせるか、そしてどちらがより多くの着地を止めることが出来るかが勝負の分かれ目となりそうです。