オールラウンダーの平行棒を見てみたという記事です。
内村航平選手が「平行棒が得意な選手というのはかなり能力が高い選手ばかり」とおっしゃっているので、2015年の世界選手権の個人総合決勝で上位入賞した選手を中心に平行棒の演技を見て行きたいと思います。
■2015世界選手権・個人総合決勝1位:内村航平選手
内村航平選手の得意種目はゆかと平行棒だそうです。
動画は2013年の世界選手権・種目別決勝で金メダルを獲得した演技です。
モリスエ~爆弾カットの流れは世界でも内村航平選手しか実施しないと思います。(海外の選手の映像を見た記憶があるような気もします)
 
○Ⅱ:前振り上がり(腕支持)開脚抜き倒立(B)
①Ⅰ:マクーツ(E:前振り片腕支持3/4ひねり単棒横向き倒立経過、軸手を換えて後ろ振り片腕支持3/4ひねり支持)
②Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
③Ⅱ:ドミトリエンコ(E:前振り上がり(腕支持)後方かかえ込み2回宙返り腕支持=腕支持からのモリスエ=アームモリスエ)
④Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑤Ⅲ:屈身ベーレ(E:後方車輪から後方屈身2回宙返り腕支持)
⑥Ⅲ:後方車輪倒立(C:ケンモツ)
⑦Ⅱ:ハラダ(D:前振り上がり(腕支持)後方かかえ込み宙返り1/2ひねり腕支持=アームライヘルト)
⑧Ⅰ:モリスエ(D:棒上後方かかえ込み2回宙返り腕支持)
⑨Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット)
⑩Ⅴ:後方屈身2回宙返り下り(D)
Dスコア:6.7(E3 D6 C1)
Eスコア:8.966
得点:15.666

動画をもう一つ。
2015世界選手権・団体決勝での演技です。
田中佑典選手が落下して、もう失敗の許されない中でのこの素晴らしい演技、感動しました!
 
①Ⅰ:マクーツ(E:前振り片腕支持3/4ひねり単棒横向き倒立経過、軸手を換えて後ろ振り片腕支持3/4ひねり支持)
②Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
③Ⅳ:棒下宙返り1/2ひねり倒立(E)
④Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑤Ⅲ:屈身ベーレ(E:後方車輪から後方屈身2回宙返り腕支持)
⑥Ⅱ:ハラダ(D:前振り上がり(腕支持)後方かかえ込み宙返り1/2ひねり腕支持=アームライヘルト)
⑦Ⅰ:モリスエ(D:棒上後方かかえ込み2回宙返り腕支持) 
⑧Ⅲ:車輪ライヘルト(D:後方車輪から後方かかえ込み宙返り1/2ひねり腕支持)
⑨Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット)
⑩Ⅴ:後方屈身2回宙返り下り(D)
Dスコア:6.8(E3 D7)
Eスコア:9.066
得点:15.866
今年はこの構成で下り技をF難度にしたいということですが、どうなるでしょうか? 

■2015世界選手権・個人総合決勝2位:マンリケ・ラルデュエト選手(キューバ)
昨年の世界選手権で体操ファンにとてつもない衝撃を与えたマンリケ・ラルデュエト選手。
バブサー、爆弾カット、下り技の高さが凄く、平行棒も得意としています。
下り技の着地の精度がとても高く、僕が見る限りでは9割以上の確率で着地を止めていると思います。
下り技では1/2ひねりを増やした「前方かかえ込み2回宙返り1回ひねり下り」の練習映像もあります。
動画は2015世界選手権・種目別決勝で5位の演技です。
  
①Ⅱ:後ろ振り上がり(腕支持)前方屈身宙返り支持(D:ホンマ、ソニック)
②Ⅳ:シャルロ(E:棒下宙返り単棒縦向き倒立、静止1秒)
③Ⅳ:棒下宙返り1/4ひねり倒立(E)
④Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑤Ⅲ:後方車輪倒立(C:ケンモツ)
⑥Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット)
⑦Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持) 
⑧Ⅲ:バブサー(E:倒立から振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き、伸身かつ水平位で懸垂)
⑨Ⅲ:ティッペルト(D:倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立)
⑩Ⅴ:前方かかえ込み2回宙返り1/2ひねり下り(F)
Dスコア:6.9(F1 E3 D5 C1)
Eスコア:8.833
得点:15.733

■2015世界選手権・個人総合決勝3位:鄧書弟(デン・シュウディ)選手(中国)
中国のエース、鄧書弟(デン・シュウディ)選手は超レア技の「リー・シャオペン」 を実施します。
動画は2015世界選手権・団体決勝での会心の演技です。種目別決勝でも銅メダルを獲得しました。
  
○Ⅱ:前振り上がり(腕支持)開脚抜き倒立(B)
①Ⅱ:リー・シャオペン(F:前振り上がり(腕支持)後方屈身2回宙返り腕支持=屈身ドミトリエンコ)
②Ⅰ:屈身モリスエ(E:棒上後方屈身2回宙返り腕支持=ファン・リーピン)
③Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
④Ⅳ:棒下宙返り1/2ひねり倒立(E) 
⑤Ⅲ:屈身ベーレ(E:後方車輪から後方屈身2回宙返り腕支持)
⑥Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット) 
⑦Ⅲ:バブサー(E:倒立から振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き、伸身かつ水平位で懸垂)
⑧Ⅲ:ティッペルト(D:倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立) 
⑨Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
⑩Ⅴ:後方屈身2回宙返り下り(D)
Dスコア:7.1(F1 E4 D5) 
Eスコア:8.966
得点:16.066

■2015世界選手権・個人総合決勝4位:オレグ・ベルニャイエフ選手(ウクライナ)
いわずと知れたベルニャイエフ選手の平行棒。
シャルロ~単棒ヒーリーは世界一の安定度だと思います。
2014年には世界チャンピオンにも輝いています。
動画は2015オシエク国際で実施した7.2の構成です。 
 
①Ⅱ:後ろ振り上がり(腕支持)前方屈身宙返り支持(D:ホンマ、ソニック)
②Ⅳ:棒下宙返り1/2ひねり倒立(E)
③Ⅳ:シャルロ(E:棒下宙返り単棒縦向き倒立、静止1秒)
④Ⅰ:単棒ヒーリー(E:単棒倒立から後ろ振り片腕支持1回ひねり支持:B難度以上のとび振動技で単棒倒立から)
⑤Ⅰ:マクーツ(E:前振り片腕支持3/4ひねり単棒横向き倒立経過、軸手を換えて後ろ振り片腕支持3/4ひねり支持)
⑥Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑦Ⅲ:ティッペルト(D:倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立) 
⑧Ⅲ:バブサー(E:倒立から振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き、伸身かつ水平位で懸垂)
⑨Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
⑩Ⅴ:前方かかえ込み2回宙返り1/2ひねり下り(F)
Dスコア:7.2(F1 E5 D4) 
Eスコア:8.850
得点:16.050

■2015世界選手権・個人総合決勝5位:マックス・ウィットロック選手(イギリス)
2014年の世界選手権・個人総合決勝で銀メダルを獲得したウィットロック選手。
リオ五輪でもかなり注目度の高い選手になると思いますが、世界のトップを走るオールラウンダーと比較すると平行棒は少しDスコアが低めです。
動画は2016全英選手権・種目別決勝で2位になった演技です。
  
①Ⅳ:逆上がり倒立(D)
②Ⅲ:ベーレ(D:後方車輪から後方かかえ込み2回宙返り腕支持)
③Ⅱ:ハラダ(D:前振り上がり(腕支持)後方かかえ込み宙返り1/2ひねり腕支持=アームライヘルト)
④Ⅰ:モリスエ(D:棒上後方かかえ込み2回宙返り腕支持)
⑤Ⅲ:ティッペルト(D:倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立)
⑥Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット)
⑦Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
⑧Ⅰ:前振り1/4ひねり単棒横向き倒立(D:Dツイスト)
⑨Ⅲ:単棒横向き前方浮腰上がり脚前挙支持経過横向き倒立(C)
⑩Ⅴ:後方屈身2回宙返り下り(D)
Dスコア:6.4(D9 C1)
Eスコア:8.925
得点:15.325

■2015世界選手権・個人総合決勝6位:ニコライ・ククセンコフ選手(ロシア)
2014世界選手権では種目別決勝に進出したククセンコフ選手です。
 
①Ⅱ:後ろ振り上がり(腕支持)前方屈身宙返り支持(D:ホンマ、ソニック)
②Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
③Ⅳ:棒下宙返り1/2ひねり倒立(E)
④Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑤Ⅲ:車輪ディアミドフ(D:後方車輪片腕支持1回ひねり倒立)
⑥Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット)
⑦Ⅲ:モイ(C:懸垂前振り上がり支持)
⑧Ⅰ:前振り1/4ひねり単棒横向き倒立(D:Dツイスト)
⑨Ⅰ:前振り1/2ひねり倒立(C:ツイスト)
⑩Ⅴ:前方かかえ込み2回宙返り1/2ひねり下り(F)
Dスコア:6.6(F1 E1 D6 C2)
Eスコア:8.433
得点:15.033

■2015世界選手権・個人総合決勝7位:ダニエル・パービス選手(イギリス) 
全英選手権などでもメダルを獲得しているパービス選手。
平行棒も得意種目だと思います。
  
①Ⅱ:後ろ振り上がり(腕支持)前方屈身宙返り支持(D:ホンマ、ソニック)
②Ⅳ:棒下宙返り1/4ひねり倒立(E)
③Ⅳ:シャルロ(E:棒下宙返り単棒縦向き倒立、静止1秒)
④Ⅰ:単棒ヒーリー(E:単棒倒立から後ろ振り片腕支持1回ひねり支持:B難度以上のとび振動技で単棒倒立から)
⑤Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑥Ⅰ:ディアミドフ(C:前振り片腕支持1回ひねり倒立)
⑦Ⅰ:前振り1/2ひねり倒立(C:ツイスト)
⑧Ⅲ:ベーレ(D:後方車輪から後方かかえ込み2回宙返り腕支持)
⑨Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
⑩Ⅴ:後方屈身2回宙返り下り(D)
Dスコア:6.6(E3 D5 C2)
Eスコア:8.800
得点:15.400

■ 2015世界選手権・個人総合決勝8位:ドネル・ウィッテンバーグ選手(アメリカ)
ドミトリエンコやライヘルト系の高さが凄いウィッテンバーグ選手。
過去には「モイ~前方屈身2回宙返り腕支持」を実施してたこともあります。
映像は2016環太平洋選手権・種目別決勝で1位になった演技です。
 
①Ⅱ:後ろ振り上がり(腕支持)前方屈身宙返り支持(D:ホンマ、ソニック)
②Ⅳ:棒下宙返り1/2ひねり倒立(E)
③Ⅳ:シャルロ(E:棒下宙返り単棒縦向き倒立、静止1秒)
④Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑤Ⅱ:ドミトリエンコ(E:前振り上がり(腕支持)後方かかえ込み2回宙返り腕支持=腕支持からのモリスエ=アームモリスエ)
⑥Ⅲ:モイ(C:懸垂前振り上がり支持)
⑦Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット)
⑧Ⅱ:ハラダ(D:前振り上がり(腕支持)後方かかえ込み宙返り1/2ひねり腕支持=アームライヘルト)
⑨Ⅲ:車輪ライヘルト(D:後方車輪から後方かかえ込み宙返り1/2ひねり腕支持)
⑩Ⅴ:前方かかえ込み2回宙返り下り1/2ひねり下り(F)
Dスコア:6.9(F1 E3 D5 C1)
Eスコア:8.900
得点:15.800
 
2013年世界選手権・個人総合決勝で銀メダルを獲得した加藤凌平選手は、2014年世界選手権・種目別決勝の平行棒で銅メダル。
 
①Ⅱ:後ろ振り上がり(腕支持)前方屈身宙返り支持(D:ホンマ、ソニック)
②Ⅳ:棒下宙返り1/2ひねり倒立(E)
③Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
④Ⅲ:屈身ベーレ(E:後方車輪から後方屈身2回宙返り腕支持)
⑤Ⅲ:ティッペルト(D:倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立) 
⑥Ⅰ:モリスエ(D:棒上後方かかえ込み2回宙返り腕支持)
⑦Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
⑧Ⅲ:車輪ライヘルト(D:後方車輪から後方かかえ込み宙返り1/2ひねり腕支持)
⑨Ⅰ:前方開脚5/4宙返り開脚抜き腕支持(D:爆弾カット)
⑩Ⅴ:後方屈身2回宙返り下り(D)
Dスコア:6.7(E2 D8)
Eスコア:8.966
得点:15.666

2014年世界選手権・個人総合決勝で銅メダルを獲得した田中佑典選手も平行棒は得意種目で、今年は棒下マクーツ(ヤマムロ)を実施しています。
  
①Ⅱ:後ろ振り上がり(腕支持)前方屈身宙返り支持(D:ホンマ、ソニック)
②Ⅳ:ヤマムロ(G:棒下宙返り片腕支持3/4ひねり単棒横向き倒立経過、軸手を換えて後ろ振り片腕支持3/4ひねり支持=棒下マクーツ)
③Ⅰ:マクーツ(E:前振り片腕支持3/4ひねり単棒横向き倒立経過、軸手を換えて後ろ振り片腕支持3/4ひねり支持)
④Ⅰ:ヒーリー(D:後ろ振り片腕支持1回ひねり支持)
⑤Ⅳ:棒下宙返り1/2ひねり倒立(E)
⑥Ⅳ:棒下宙返り倒立(D)
⑦Ⅰ:前振り1/2ひねり倒立(C:ツイスト)
⑧Ⅰ:前振り1/4ひねり単棒横向き倒立(D:Dツイスト)
⑨Ⅲ:単棒横向き前方浮腰上がり脚前挙支持経過横向き倒立(C)
⑩Ⅴ:後方屈身2回宙返り下り(D)
Dスコア:6.8(G1 E2 D5 C2)
Eスコア:9.250
得点:16.050 

2015年の世界選手権・種目別決勝の結果を見ても、すべてがオールラウンダーです。
金メダル:尤浩(ヨウ・ハオ)選手(中国)
銀メダル:オレグ・ベルニャイエフ選手(ウクライナ)
銅メダル:オレグ・ステプコ選手(アゼルバイジャン)
銅メダル:鄧書弟(デン・シュウディ)選手(中国)
5位:マンリケ・ラルデュエ選手(キューバ)
6位:ダネル・レイバ選手(アメリカ)
7位:田中佑典選手
8位:ナイル・ウイルソン選手(イギリス)
尤浩(ヨウ・ハオ)選手もDスコアが38.0を超えて6種目出来る選手なのでオールラウンダーと言ってもいいと思います。

さらにはアメリカのエースのサミュエル・ミクラック選手も平行棒は得意で、今年のロシア選手権・種目別決勝平行棒のチャンピオンのダヴィド・ベルヤフスキー選手など世界の名だたるオールラウンダーの選手は平行棒が得意ということがよくわかると思います。